今回は、整復方向と整復意識方向についてお話をします。
整復方向と整復意識方向は、同じような表現ですが大きく違うものとなります。
ほとんどの関節では、関節機能軸が関節の中にあります。
そのため、整復方向は関節方向に一致します。
これは整復するうえで、整復力を発動しやすいものになります。
加圧整復法はもちろんのこと、静水圧整復法でも同様となります。
では、関節機能軸が関節内にないのはどの関節でしょうか?
仙腸関節です。
仙腸関節は、関節機能軸が関節内にないという特徴があります。
仙腸関節の整復の難しさは、関節機能軸が関節内にないことが関係しています。
では、仙腸関節の機能軸(機能的真軸)はどこにあるのでしょうか?
下後腸骨棘(PIIS)と坐骨棘を結ぶ線の中心から、やや大坐骨孔の内側にあります。
仙腸関節の関節機能軸(機能的真軸)に整復力を発動することは、非常に高度な技術が必要になります。
わずかなミスで、外傷性角加速度損傷(Plt)や外方引き出し型非荷重損傷(ASEX)を発生させる可能性すらあります。
そこで、仙腸関節の整復の技術が低い時期は、仙腸関節面に整復手を固定して、仙腸関節方向に整復力を発動させることで安全性を高めます。
もちろんこの方法でも、正確性を欠くと外傷性角加速度損傷(Plt)や外方引き出し型非荷重損傷(ASEX)を発生させる要因となります。
この方法は十分に効果がありますが、仙腸関節の関節機能軸(機能的真軸)と比べるとわずかに方向に差がでます。
この差を補正するために、仮想整復方向を設定するのです。
この仮想整復方向のことを、整復意識方向と呼びます。
例えば、非荷重整復法第1段階では、水平ラインから後下方30度に整復意識方向を設定します。
このように整復意識方向は、関節機能軸が関節の中にない仙腸関節にのみ設定されるものとなります。
非荷重整復法第1段階は、非荷重整復の初歩となりますが、全ての非荷重整復法の基幹的整復法となります。
そのため、非荷重整復法の技術を習得するうえで、最も重要な整復法となります。